ponsta_comのブログ

おもいついたこと

Re:ニヒリズム

「別に何やっても意味なくね、どうせ死ぬし。」って、そんなつまんない顔で食べるなら、ビーフシチューなんか作るんじゃなかった。

カチャカチャとスプーンの音だけが鳴る。あなたの眼鏡の金色の縁は、蛍光灯の安い光を照り返した。

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なんでも知ってる所がかっこいいと思った。人をよく馬鹿にするけど、まだ子供なんだなって可愛く思った。

スマホばかり見つめる冷たい目は、私を見つめてはくれなかったけど、ブルーライトを反射するあなたの睫毛の光る雫に恋をした、ような気がした。

もしかしたら、ただあなたを抱きたかっただけなのか、私には分からなかったけど、とても愛おしく思い腕にキスした。

ふいに目があい、押し倒された。真っ白い木の壁には、ドライフラワーが几帳面に吊るされていた。何も敷かれていない床は冷たかったけど、あなたの好きな花、あなたの好きな音楽、あなたの好きな世界を壊したくないから、そのまま目を閉じて、あなたの夢に付き合った。背中は、ほんの少しだけじんわりと、あたたかくなった。

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「じゃあアンタは一生、味のないお粥ばっかり食べてれば。」
揚げ足とりばかりが好きな息子をたしなめた。ニヒリズムに恋をしていたあの頃の私よりも、ずいぶん太ってしまった。


どうせ死ぬんだからこの子達を産んだのは意味が無かっただったなんて、きっと死ぬまで思わない。

意味がなくても、明日もこの子らと一緒にいたい。そして明後日も、出来ることなら、いつまでも、この瞬間を味わいたいと願う気持ちが、私を明日へ向けてくれている。

 

忙しくて、たまにカレーを何日も続けて出してしまうけど、それでもできるだけ、昨日とは少しずつ違う味の料理を出そうと、何の飾りもないキッチンで戦っているのだ。