流れ星
流れ星は叫んでいた。
「誰か!私を止めてください!」
叫びは、どこにも届かないまま真っ暗な闇にすぐ吸い込まれ、流れ星はただ流れ続けた。
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どれくらい漂っただろうか、遠くに眩しい星達が点々と見え始めた。
「おーい」と手を振ると、「おーい」という声が聞こえた。
遠くにみえた星たちは、放物線を描きながら近づいてきて、気付くと私の隣で流れていた。
「こんにちは」
「こんにちは」
「寂しかったから、嬉しいな」
「僕も」
僕も、僕もと、星達はざわめき、微笑んだ。星達は、遠くで眺めて思っていたより、意外と、私と同じくらいの大きさだった。
私たちは一群になって、大きな光となった。
通りすがる隕石を、惑星を、全てを照らす、あたたかい光だった。
「僕たちって、友達っていうのかな。」
そうだ、そうだよと、また星達はざわめいた。
しかし、ほんの僅か、ほんの1度にも満たない流線の向く先の違いが、無限遠を飛ぶ私たちにとっては、どうしようもない運命だったらしい。
やがて私たちは少しずつ少しずつ離れていき、皆バラバラに、遠く消えた。
「また会おうね。」
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「私は昔、お母さんだったの。」
私よりほんの少し大きい星が教えてくれた事がある。
「あんまり昔だから、なんにも覚えてないけど。でも確かに、誰かのお母さんだったんだ。」
私も無限に思える時間を飛んできたから、昔の事は忘れてしまった。そういえば私も誰かの子供だったのだろうか。
ふと星は、ただ連れ添って、光っていただけのときのことを思い出した。
やわらかい光であった。
一人で流れていた星は、広い広い宇宙の中で、突然フッと燃え尽き消えた。